ゲルテ

ゲルテ(Ghelte)または黴体生物は、系統不明の生物群。

菌類のような発生形態をとるが、成長するにつれ高度に分化した器官を持つ肉質の体を形成する。現代科学では説明しづらい能力を持つことから、魔法生命体と呼ばれることもある。

習性

多くの種では自発的な運動性は見られないが、アラバチ属のいくつかの種はウニやヒトデのような緩慢な移動をする。また、刺激を与えるとひくつくような反応をし、ねじれたり痙攣する種もある。その際に体液を分泌したり、刺激の加わった部位が発光するものや、体内の空気を吐き出し「鳴き声」を発する種もある。

再生力が高く、欠損部位は数時間で細胞が活性化し、数日で元どおりになる。

植物が開花するように、陰頭部を露出させて開く開陰という習性がある。繁殖行動の一種だと思われるが、詳細は不明。

地面や他の黴体生物、生物の死骸などの基質に、挿入足と呼ばれる部位で体を固定して生息している。養分をこれら基質から得ているかは不明である。

特筆すべきは、全身に張り巡らされた高度な神経網である。この神経網上での生体電子制御によると思われる多様な巨視的量子効果、いわゆる『魔力』を利用する性質がある。そのため体内や周囲では因果律破綻が恒常的に見られる。例えば異物の物理的性質を変換して吐き出す、ユラギと呼ばれるワームホールのような事象を発生させる、汎世界線的な通信能力などである。また、大型の『サカサミカドニクボウ』は中心軸から強い重力場が発生しており、表面を垂直に歩けるほどである。

外流天新書』によれば、基質の情報を食べている、エントロピーそのものを食べているなどの超常的な推測がなされているものの、裏付けはできていない。

魔界のサカサミカドニクボウ頂部の『泉』で起きる幻覚体験などから推測するに、量子通信による汎世界線生体分散ストレージとして機能しているという見方もある。

体の構造

成体は基質に近い部分を底部、遠い部分を頂部と呼称する。低部は棘皮動物のような五放射相称をとる一方で、頂部は左右対称という特徴的なボディプランを持つ。

ヒト器官を想起させる器官が多く、質感もヒトの肌や脂肪、筋肉と近しい。体内温度は36度前後だが、表面はひんやりと冷たい。こういった特徴から、ヒトとの遺伝的関連があるのではないかと考えられているが、分子生物学的調査の結果が待たれる。

表面に目が発生する種もあり、まばたきや、眼球運動が観察できる。発達した神経網と量子通信能力を持つため、生存に有利に働く何らかの情報収集に使用していると考えられる。

勃茎が1つかそれ以上かによって、大まかに単勃茎型と多勃茎型に分類される。

基本的に表皮、真皮、脂肪質、筋、海綿体で構成されている。骨格に相当する器官はなく、筋と海綿体の剛性で形を保っている。またこれらの器官を張り巡る高密度で巨大な神経網がある。

  • 勃茎
    • 樹木の幹に相当する柱状の部位。肉茎とも。
  • 包皮
    • 勃茎先端部にある、陰頭や陰脚を包む皮。種によっては痕跡程度になっているものもある。
  • 陰頭
    • 包皮に格納されている、数枚の肉弁からなる器官。陰頭裂を保護する。
  • 陰頭弁
    • 陰頭を構成する肉弁
  • 陰頭裂
    • 陰頭弁の間や中央にある溝で、内部にある管状器官の開口部にあたる。
  • 勃根
    • 接地面に近い部位。勃根がボールや座布団状の丸みを帯び、肥大化する種も多い。接地面には挿入足という器官がある。
  • 挿入足
    • 勃根底面にある、接地面に体を固定するための足。
  • 陰脚
    • 一部の種類に見られる、関節構造を持つ大型の陰頭弁。
  • 陰尾
    • 陰脚の間にある小型の陰頭弁。尾の様に見えるためこう呼ばれる。種によっては分岐し、触手状に発達することもある。
  • 黴体瘤
    • 古い黴体生物に頻繁に見られる、こぶ。植物の虫こぶと同様、表面組織が異常な発達をして形成される。サイズは数十cmから10m級までばらつきがある。寄生型の黴体生物のコロニーか、悪魔の巣だと考えられる。

種類

下記はあくまでも形態学的分類であり、今後の研究により大きく変化する可能性が高い。 [1]

  • アラバチ属:マタノコシカケとの共通祖先から分岐進化した種と考えられる。
  • ニクボウ属
    • ニクボウ
    • オトメニクボウ
    • フシニクボウ
    • ヌメリフシニクボウ
    • テングニクボウ
    • ゴムニクボウ
    • スベスベゴムニクボウ
    • ミカドスベスベゴムニクボウ
    • サカサミカドニクボウ
    • ジゴクヌメリフシニクボウ
    • ニクウツボ
    • ユウレイニクウツボ
  • ハスパン属
    • ハスパン
    • ラブラブカシパン
  • ナマアシ類
    • タニクナマアシ
    • ウツボナマアシ
    • チチノムレ
    • マタノコシカケ
  • ニクヒル属:黴体生物では珍しく顕著な運動性を示す種。寄生性のものが多い
    • ミミハラミ
    • ニクヒル
  • ニクタケ属:単勃茎と多勃茎の特徴が混在している。多勃茎型黴体生物の祖先種からの分岐進化であり、黴体生物の中でも原始的な特徴を色濃く残す種だと考えられる
    • ニクタケ
    • ミマタダンダンニクタケ
    • ヨマタニクタケ
    • ヤマタニクタケ
    • ヒカリニクタケ
  • ニクマンジュウ属
    • ニュウボウギンチャク
    • イボニュウボウギンチャク
    • ニクマンジュウ
  • ニクザブトン属
    • マダラニクザブトン
    • ニクザブトン
    • ニュウトウタイバン
    • カサネタイバン
    • ミダレポリープ
    • ホウシャポリープ
    • スジポリープ
  • カイメンマラ属
    • テーブルカイメン
    • キンプンカコイ
    • バケカイメンマラ
  • キニュウロウ属
    • ニュウボウバシラ
    • マテンキニュウロウ
  • フウセンタイバン属
    • フウセンタイバン

脚注

  1. ^外流天新書』より抜粋